遺留分とは相続人が相続できる最低限度の相続分です。
遺言等によって遺留分を侵害された相続人は、「遺留分減殺請求権」を行使
することによって侵害された相続分を取り戻すことができます。
相続で揉める原因の多くがこの遺留分です。各相続人の遺留分に配慮した遺言書の作成が「争族」対策として効果的です。
遺留分割合
相続人
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相続財産に占める遺留分の割合 (遺留分権利者全員の遺留分の合計)
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配偶者のみ |
1/2 |
子のみ |
1/2 |
配偶者と子 |
1/2 |
配偶者と直系尊属 |
1/2 |
直系尊属のみ |
1/3 |
※兄弟姉妹に遺留分は認められません。
実例と効力
遺留分割合に各相続人の法定相続分を掛け合わせたものが遺留分となります。
例
相続人が配偶者しかいない夫婦の場合、夫が全財産を愛人に残すという遺言を作成したとしても、妻は遺留分減殺請求することで、以下の割合を相続することができます。
夫の全遺産×妻の遺留分割合(1/2)×妻の法定相続分(全部)=遺産の1/2
遺留分は、権利者が減殺請求しなければ効力を生じません。上記例で言うと、全財産を愛人に譲るという遺言は一応有効であり、妻の遺留分1/2について遺言は無効になるということはありません。妻が遺留分減殺請求をしなければ、遺産は遺言に従って全て愛人に渡ります。
遺留分の放棄
遺留分は被相続人の生前に放棄することができます(民法1049条1項)が、家庭裁判所の許可が必要です。
似たような制度に相続放棄がありますが、こちらは相続開始後しか認められません。
「争族」の原因としての遺留分
冒頭でも述べましたが、相続争いの原因の多くが遺留分です。放棄してもらうことは法律上可能ですが、相続人の協力と家庭裁判所の許可が必要なため現実的ではありません。
また、遺産に不動産が含まれる場合、相続人間で分けることが困難なうえに遺留分額も高額となるため、争いの原因となります。
遺留分対策
遺留分の対策としては、
①そもそも遺留分を侵害しない遺言を作成する。
②保険金等で遺留分相当額を相続人に確保する(遺産に不動産が含まれている
場合等)
③遺言書の付言事項で、遺留分を侵害する内容の遺言を作成した理由を説明
する。
等が考えられます。
遺留分の問題はどこまでも付いてきます。
揉めないための事前準備は必ず専門家にご相談ください。