相続・遺言セミナー開催します。

 本日は、シーズン初の雪道を緊張しながら運転し、鈴川コミュニティセンターへ行って参りました。

 何の用事かと言いますと、標題のとおりセミナーを開催するための会場予約です。

 今までは高齢者用施設でセミナーを開催してきましたが、今回は初めて一般公募?で参加者を募ります。
 多くの方に足を運んで頂けるように、告知と準備をがんばります。

「相続・遺言セミナー」
日時:2020年2月29日(土) 14:00~15:00(開場13:30)
場所:鈴川コミュニティセンター 2F会議室
   山形市山家町2-4-48
定員:先着40名
費用:無料
内容:誰が相続人となるか。寄与分・特別受益・遺留分とは。
   遺言の種類。遺言で書くべきこと、気を付けること。
 筆記用具をご持参ください。

遺言執行者

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う者のことです。

遺言執行者が必要な場合

◦不動産の遺贈により登記をする場合。
◦遺言で子が認知された場合。
◦遺言で推定相続人の廃除(又はその取消)がされた場合。

 上記以外の場合は、遺言執行者は必須ではありません。
 しかし、相続人や受遺者が複数人いる場合などは、相続手続きに全員の署名・押印・印鑑証明が求められることもあるため、円滑な手続のためには遺言執行者を選任した方が良いでしょう。

誰が遺言執行者になるか

通常は誰でも遺言執行者になれます(未成年・破産者を除く)

 相続人間の関係が良好であれば、相続人の中から遺言執行者を選任することが考えられます。
 しかし、相続人の1人に遺言執行者という強力な権限を与えることが「争族」の火種となることも考えられます。
 また、相続手続きに不慣れな者が遺言執行者になった場合、手続きが遅れることによって様々なリスクを生じます。
 遺言執行者は専門家に依頼することをお勧めします。

遺言執行者の職務

遺言に従って、遺産を管理・引き渡し・報告します。

 相続開始後、第一に重要なのは遺産の流出を防止することです。
 被相続人の死亡により相続が開始したことを関係各機関(金融機関等)に通知し、以後は相続人等が勝手に遺産を処分したり出来ないようにします。

 次に、遺産の状況を確認し財産目録を作成します。
 遺産は遺言書に書かれている財産だけとは限りません。必要によっては家の中を捜索したり、生前に付き合いがあった機関に問い合わせる等により、可能な限り漏れなく遺産を把握します。
 遺産はプラスのものだけでなく、借金等のマイナスの遺産も忘れずに調査しましょう。
 作成した財産目録は相続人と包括受遺者に配布します。

 最後に、遺言書に従って遺産を引き渡します。
 遺言書に記載のない財産については、相続人で遺産分割協議を行い、協議が整わない場合は法定相続分によって承継します。

遺言で出来ること

財産について

相続分の指定・遺産分割方法の指定・第三者への遺贈・特別受益の持ち戻しの免除・特定団体への寄付・信託の設定 など

身分行為について

子供の認知・未成年後見人の指定・遺言執行者の指定・祭祀承継者の指定・法定相続人の廃除 など

※遺言執行者:遺言内容を実現するために必要な手続きをする人

※祭祀承継者:墓・位牌・仏壇等(祭祀財産)を承継する人。祭祀財産は相続財産とは別に扱われます。

遺言はこんな方におすすめ

遺言は、相続人でない者に財産を与える等、法定相続とは違う形で遺産を承継させたいときに有効です。従って、以下の事情に当てはまる方は遺言の活用をお勧めします。

◦正式な婚姻をされていない方(内縁関係)
◦子供を連れて再婚された方
◦子供のいない方
◦家業の後継者を指定したい方

※正式な婚姻をされていないパートナーは、法律上は相続人になれません。限定的に相続人や親族と同じ扱いとなる場合もありますが、遺言がない場合、遺産は法律上の相続人に承継されます。

※子供を連れての再婚の場合、再婚相手と連れ子が自動的に法律上の親子になるわけではありません。法律上の親子関係を生じさせるためには養子縁組が必要です。
養子縁組は子供に権利だけでなく義務(扶養義務等)も負わせます。ケースに応じて養子縁組すべきか遺言を残すべきか検討する必要があります。

遺言の種類

自筆証書遺言

◦本文・日付・氏名を本人が手書きし、押印します。

◦遺言は自分で保管し、相続開始後は家庭裁判所による検認を経なければなりません。

 法改正ポイント

◦財産目録については通帳等のコピーやパソコン等で作成したものに著名・押印すれば遺言として認められます。  

◦法務局による自筆証書遺言の保管制度が始まります(2020 7/10~)

公正証書遺言

◦原則として、公証役場に出向いて作成します。

◦証人2人以上の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人がこれを書面化して、間違いがないことを証人と共に確認します。  

◦遺言は公証役場で保管し、検認は不要です。

秘密証書遺言

◦自作した遺言書を封筒に入れて封印し、証人2人以上の立ち合いのもとで公証人に提出し、証人と公証人が封筒に署名押印します。 

◦作成後は遺言を自分で保管するため検認は必要です。

※検認とは

 家庭裁判所に持参し、遺言の存在・内容を確認して保全する手続きです。検認を経ずに封を開けると罰せられることがあります。

 検認したからと言って、遺言書が本物であると認められるわけではありません。

遺言の種類メリットデメリット
自筆証書遺言費用が安い。1人でいつでも作成できる。遺言の存在や内容を秘密にできる。様式不備で無効になり得る。検認が必要。紛失のおそれがある。遺言の真贋をめぐって争いになるおそれがある。 
公正証書遺言様式不備で無効になることはない。検認不要。紛失のおそれがない。作成費用が高い。証人が2人以上必要。  
秘密証書遺言遺言の内容を秘密にできる。 費用が高い様式不備で無効になりえる。証人2人以上必要。検認が必要。紛失のおそれがある。

単純承認・限定承認・相続放棄

相続についての選択権のことです。

単純承認
 プラスの遺産もマイナスの遺産も全て引き継ぎます。
 単純承認するための手続きは、その旨の意思表示をすることですが、
 実際上は特に必要な手続きはありません。

限定承認
 プラスの遺産の範囲内でマイナスの遺産を清算し残りがあれば相続します。
 マイナスの遺産が残った場合は相続しません。
 手続きは、自己のために相続があったことを知った日から3ヵ月以内に、
 相続人全員で家庭裁判所に申し立てます。

相続放棄
 プラスの遺産もマイナスの遺産も全て放棄します。
 相続放棄した者は、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
 手続きは、自己のために相続があったことを知った日から3ヵ月以内に、
 家庭裁判所に申し立てます。

以上を見ると、限定承認が一番良いように感じますが、実際はほとんど使われません。
理由としては、①相続人内に1人でも反対者がいると利用できない。
       ②手続きが煩雑。
       ③税金が余計にかかる場合がある。  等があります。

 相続放棄の期間が3ヵ月であることから、相続するかしないかは3ヵ月内に決める必要があります。
 この期間内に遺産の調査や相続人の調査を完了させましょう。

遺留分

 遺留分とは相続人が相続できる最低限度の相続分です。
 遺言等によって遺留分を侵害された相続人は、「遺留分減殺請求権」を行使
することによって侵害された相続分を取り戻すことができます。

 相続で揉める原因の多くがこの遺留分です。各相続人の遺留分に配慮した遺言書の作成が「争族」対策として効果的です。

遺留分割合

相続人

相続財産に占める遺留分の割合
(遺留分権利者全員の遺留分の合計)

配偶者のみ 1/2
子のみ 1/2
配偶者と子 1/2
配偶者と直系尊属 1/2
直系尊属のみ 1/3

 

※兄弟姉妹に遺留分は認められません。

実例と効力

遺留分割合に各相続人の法定相続分を掛け合わせたものが遺留分となります。
例 
 相続人が配偶者しかいない夫婦の場合、夫が全財産を愛人に残すという遺言を作成したとしても、妻は遺留分減殺請求することで、以下の割合を相続することができます。
  夫の全遺産×妻の遺留分割合(1/2)×妻の法定相続分(全部)=遺産の1/2

 遺留分は、権利者が減殺請求しなければ効力を生じません。上記例で言うと、全財産を愛人に譲るという遺言は一応有効であり、妻の遺留分1/2について遺言は無効になるということはありません。妻が遺留分減殺請求をしなければ、遺産は遺言に従って全て愛人に渡ります。

遺留分の放棄

 遺留分は被相続人の生前に放棄することができます(民法1049条1項)が、家庭裁判所の許可が必要です。
 似たような制度に相続放棄がありますが、こちらは相続開始後しか認められません。

「争族」の原因としての遺留分

 冒頭でも述べましたが、相続争いの原因の多くが遺留分です。放棄してもらうことは法律上可能ですが、相続人の協力と家庭裁判所の許可が必要なため現実的ではありません。
 また、遺産に不動産が含まれる場合、相続人間で分けることが困難なうえに遺留分額も高額となるため、争いの原因となります。

遺留分対策

 遺留分の対策としては、
①そもそも遺留分を侵害しない遺言を作成する。
②保険金等で遺留分相当額を相続人に確保する(遺産に不動産が含まれている
 場合等)
③遺言書の付言事項で、遺留分を侵害する内容の遺言を作成した理由を説明
 する。
 等が考えられます。

遺留分の問題はどこまでも付いてきます。
揉めないための事前準備は必ず専門家にご相談ください。

寄与分

ある相続人の貢献のおかげで、被相続人の財産を維持・増加できた場合に、
その貢献を「寄与分」と呼び、相続の際には寄与分を考慮した相続分となります。

寄与分の具体例
 ◦親の事業を手伝ったことで、親の財産が増えた。
 ◦親の療養介護をしたことで、親の財産を維持できた。
    ※寄与分の認定は個別具体的に判断されます。

計算方法
 (遺産額-寄与分)を法定相続分で分ける。
  →寄与分のある相続人には(法定相続分+寄与分)

例題 遺産1000万円 相続人は長男と次男の2人 長男には400万円の寄与分有り。
   (遺産1000万円-寄与分400万円)=600万円
   これを法定相続分1/2で分配→1人300万円
   長男はこれに寄与分400万円をプラス→700万円
   最終的な相続分 長男700万円 次男300万円

特別受益

相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた者がいる場合、
その利益を「特別受益」と呼び、相続の際には特別受益を考慮した相続分となります。

例 ◦大学の学費  ◦住宅購入資金  ◦独立開業資金 等
  ※何が特別受益に当たるかは個別具体的に判断されます。

計算方法
 (遺産額+特別受益額)を法定相続分で分ける。
 →特別受益のある相続人には(法定相続分-特別受益額)

例題 被相続人の遺産1200万円。相続人は長男と次男の2人。
   長男だけ被相続人から生前に特別受益300万円を受けている。

計算 遺産1200万円+特別受益300万円=1500万円
   これを法定相続分1/2で分配→1人750万円
   長男はこれから特別受益額をマイナス
    →750万円-特別受益額300万円=450万円
   最終的な相続分 長男450万円 次男750万円

法定相続分

被相続人が相続分について意思を示さずに死亡した場合、
各相続人が相続できる持分のことです。
誰が相続人となるか、何人相続人がいるかによって相続分は変化します。

 
配偶者 子(第1順位) 親(第2順位) 兄弟姉妹(第3順位)
1/2 1/2 0 0
2/3 いない 1/3 0
3/4 いない いない 1/4
全部 いない いない いない
いない 全部 0 0
いない いない 全部 0
いない いない いない 全部

※子・親・兄弟姉妹が複数いるときは、法定相続分をその頭数で割ります。

(例)相続人が配偶者と子4人の場合
   配偶者の相続分は1/2
   子1人あたりの相続分は1/2÷4人=1/8