形式的注意点
まず1点目について、自筆証書遺言において日付の記載は必須です。にもかかわらず、日付を「4月吉日」としてしまう方がいらっしゃいます。
原則として遺言書は後から作成した方が効力を有します。そのため、作成の前後を判断する日付は遺言書において重要な記載事項です。具体的な日付を記しましょう。
形式的注意点の2点目も自筆証書遺言についてです。自筆証書遺言の作成にあたって証人の立ち合いは求められておりません。本人1人のみで作成できます。従って、本当に本人が作成したのか、後から争いになる場合があります。
争いになるパターンとして多いのが、「遺言書は本人以外の者が偽造したものである」というものと、「遺言書作成当時、本人は既に認知症が進行していた」という主張です。
遺言書は間違いなく本人が自分の意思で作成したものであるということを立証するのは想像以上に困難なものです。争いの火種を残したくない方は公正証書遺言の作成をお勧めします。
あくまで自筆証書遺言にこだわる方は、遺言書作成状況をビデオ撮影し保存したり、専門家に立会人になってもらう等の工夫が必要です。
実質的注意点
遺留分について
遺言書に紛争を防止する機能を期待するのであれば、最も重要なポイントは相続人の遺留分への配慮です。遺留分の詳細はこちらをご覧ください。
法律上、相続人と相続分は定められているため、相続人(となる予定の方々)は自分がどれだけ遺産をもらえるか計算しています。そこに自分の計算とは違う内容の遺言書を突き付けられると、相続人は感情的になってしまうことが多いようです。
このような場合に、最低限の遺留分への配慮があれば、相続人としては文句は言えなくなります。相続人の遺留分には配慮しつつ、被相続人の意思を最大限実現できるようなバランスのとれた遺言書の作成が望まれます。
万が一、遺留分を侵害する内容の遺言書を作成する場合は、付言事項でその理由を丁寧に説明しましょう。感情的対立を鎮める効果は期待できます。
その他の実質的注意点
寄与分や特別受益への配慮も紛争防止という点では重要です。
例えば、寄与分について「被相続人の介護で大変な思いをしたのだから、相続にときに多く遺産をもらえるはずだ」と考えている相続人がいたとします。実際、寄与分が認められる相続人は受け取る遺産が多くなるのですが、寄与分の評価について問題が発生します。
つまり、介護した本人は寄与分を大きく評価するのに対し、他の相続人は過小評価する傾向があります。この評価の差が紛争の火種となってしまいます。
遺言書における寄与分・特別受益の記載は、客観的事情をもとに計算のプロセスを示して結論を導くと同時に、感謝の気持ち分だけちょっと上乗せするのがよいのではないでしょうか。